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大阪地方裁判所 昭和30年(ワ)345号 判決 1957年12月06日

事実

原告は、破産宣告を受けた甲会社の破産管財人で、破産会社乙を被告として、破産前の株主総会の取締役等選任決議の取消を求めた。

原告は、まず原告適格について、破産会社甲はその破産当時、被告会社乙の株式を所有していたから、右株式は破産宣告によつて当然破産財団に帰属し、従つてこれが管理処分権を有する原告は、株主の資格において本件決議取消の訴を起すことができると主張し(松田、鈴木著株式会社法条解二四五頁は、株主が破産したとき、破産管財人は決議取消権を行使し得ないとする。)次に株主総会の招集の通知を、かかる株式の管理権に基き株式の議決権をもつ原告にも、また破産会社甲にもしないで、取締役等選任の決議がなされたのは、取り消されるべき違法な決議であると主張した。

理由

判決は、原告適格についてはこれを暗黙に肯定し、次のとおり判示したうえ、結局破産会社甲に招集手続を欠いている違法があるとして、株主総会の決議を取り消した。

一、被告会社の当事者適格について。被告会社が破産の宣告を受けたことは当事者間に争のないところである。ところで破産法一六二条によると、破産財団に関する訴についての訴訟実施権は破産管財人に専属するのであるから、本件決議取消の訴がもし被告会社の破産財団に関するものということになれば勿論その破産管財人をもつて被告とすべきであるが、そうでないかぎり被告会社が破産宣告の有無にかかわらず訴訟実施権を有するものといわなければならない。そこで、この訴が右破産財団に関するものであるかどうかについて考えてみるのに、この訴の訴訟物は被告会社臨時株主総会における取締役及び監査役の選任決議等の取消請求であつて、別に被告会社の破産財団を構成する財産の処分決議の取消を求めるものではないことが原告の主張自体から明らかに認められるから、その破産財団に全く関係ないものというべく、従つて、この訴の被告適格を有するものは、右破産管財人ではなく被告会社というべきである(同趣旨、会社設立無効の訴につき、大正九年五月二九日大審院判決、会社不成立確認の訴につき昭和一四年四月二〇日大審院判決)。

二、株主総会招集手続の瑕疵について。株主が破産した場合、株式の譲渡その他特別の事情でもあれば格別そうでない限り、破産株主が議決権の帰属主体であることにかわりなく、従つて、総会招集の通知は破産株主に宛てすべきであつて、破産管財人に対してなすべきものでないと解されるから、破産管財人たる原告に対して招集通知がなかつたことを瑕疵の一理由とする原告の主張は、採用できない。

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